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製紙スラッジの有用性

製紙スラッジの有用性

製紙スラッジとは、紙を作る工程で発生する廃棄物です。製紙スラッジは通常、ボイラーで焼却処理し減容化後、セメント原料や再生砕石に再利用したり、埋め立て処分されます。紙の生産に比例し大量に発生するので厄介者扱いされますが、近年、着目されているのが製紙スラッジに含まれるカルシウム成分です。 本コラムでは、カルシウムに着眼した製紙スラッジの有用性を紹介します。

製紙スラッジのカルシウムの起源

製紙工場は、工場毎に製造する紙の種類が決まっています。紙の種類は、段ボール原紙、新聞用紙、印刷用紙、トイレットペーパー等、様々です。その中で、カルシウムを原材料に使うのは、新聞用紙、印刷用紙です。紙の表面に塗ったり混ぜ込むことで、紙表面の平滑性を上げ文字を書きやすくしたり、印字の裏抜けを防止します。

カルシウムは紙を抄く過程で水と一緒に排水され、製紙スラッジに混入します。 また、段ボール、新聞、チラシは市場から古紙として回収され、紙の原料に再利用されます。古紙パルプを生産する過程で、微細な古紙繊維と一緒にカルシウムが排水され、製紙スラッジに混入します。

よって、段ボール原紙、新聞用紙、印刷用紙を製造する工場の製紙スラッジは、カルシウムが豊富に含まれています。

カルシウム含有 製紙スラッジの有用性

1.廃棄物焼却炉 排ガスのダイオキシン抑制剤として利用

廃棄物焼却炉はダイオキシン類対策特別措置法で、排ガス中のダイオキシン類濃度基準が定められています。この基準を順守するため、維持管理基準で燃焼条件(燃焼温度800℃以上、炉内滞留時間2秒以上、排ガス集塵機前温度200℃以下、排ガスCO濃度100ppm以下)が決められています。しかし、これを順守しても、塩素濃度が高い燃料を燃やした時は、排ガス中のダイオキシン類濃度基準を超過するケースがあります。そのため、廃棄物焼却炉には、排ガス集塵機前に活性炭や生石灰を吹き込む設備が設置されています。 カルシウム含有 製紙スラッジは、塩素濃度が高い燃料と一緒に燃焼させると、排ガスに生石灰を吹き込むのと同等の効果が得られます。

2.焼却灰をセメント原料に利用

セメント原料にカルシウムは不可欠です。従来、カルシウムは石灰岩から製造していましたが、近年は資源の減少で縮小しています。そこで着目されてきたのが、製紙スラッジ焼却灰の含まれるカルシウムです。セメント会社にとって、製紙スラッジ焼却灰は、灰とカルシウムの両方が原料になるので、必要不可欠なものです。

3.古紙パルプ製造工程の製紙スラッジよりカルシウム分離

製紙スラッジが発生する工程で、最もカルシウム濃度が高いのは、古紙パルプ製造の脱インク工程です。この排水のみ分離し脱水して焼くと、灰分としてカルシウムが残ります。再生カルシウムとして様々な用途に使えます。

4.二酸化炭素吸収材

近年、二酸化炭素地球温暖化に影響するとして大きな問題になっています。カルシウムは二酸化炭素を吸収し、炭酸カルシウムとして固定化する機能もあります。