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仕事を増やさないISO14001要求事項の解釈事例

仕事を増やさないISO14001要求事項の解釈事例

環境監査は、審査機関によるISO14001審査の他、取引先から受ける場合もあります。質問される内容は、どの監査もほぼ同じです。監査員に見せる資料は、実務資料を使わなければ、監査前の資料チェックが負担になるし、どこかでボロが出てしまいます。 また、監査の受け答えを誤ると、是正処置として次々に余計な資料を作る羽目になり、負のスパイラルに入ってしまいます。 ISO要求事項をどのように解釈すれば、監査を楽に受けられるのか、その事例を紹介します。

環境教育に関する解釈事例

ISO14001監査で、従業員の環境教育に関する質問が必ずあります。まず、社内で何を環境教育と位置付けるのか、はっきりさせておかなければなりません。環境教育の定義を間違えると、負のスパイラルに入ってしまいます。

●悪い例

環境教育とは、大気、水質、廃棄物等の法令教育、節電や節水等の省資源化教育等が該当すると考えがちです。これを起点にすると、4月に大気教育、5月に水質教育、6月に…、というスケジュールを立て、次に4月に向け誰かが大気教育の資料を作成するという余分な業務が生じます。このパターンの場合、教育資料を作る人の負担が大きく長続きしません。また、一律、大気教育をしても、少なからず、一部の受講者は教育内容とのミスマッチが起こり、無駄な時間を過ごしてしまいます。

〇良い例

環境教育の「環境」という枠を広げ、従業員一人ひとりが健全に業務を行うための教育と考えましょう。そのために会社が必ず行う教育に、以下があります。

  1. 新入社員、転入社員教育
  2. 作業基準書教育
  3. コンプライアンス教育

教育は必要な人に、必要な教育を行うのが基本です。新入社員や転入社員に必要な教育カリキュラムは会社や各部にあるはずです。各職場に配属されると、そこで作業するための基準書教育があるはずです。コンプライアンス教育は幅が広く、①飲酒運転は止めましょうというような社会生活を送るための基本教育もあるし、②製造現場に配属された従業員に、廃棄物処理法に基づいたゴミの分別教育を行う等もあります。①と②は対象者が違います。

監査では、上記1~3を教育と定義していることを、最初に監査員に伝えましょう。その次に、実際に使用している教育計画表や記録を見せて、説明しましょう。上記1~3を一元化したカレンダー式の年間スケジュールは不要です。新入社員は毎年4月に入社するので、その時が教育時期です。作業基準書教育は、基準書が改訂になった時が教育時期です。コンプライアンス教育として、年1回、廃棄物処理法の教育をすると決めている場合は、年間の環境保全活動計画等の中に、そのように記載しておけば、それが教育計画になります。

既に上記の良い例のような教育体系があるのに、ISO事務局がそれをISO要求事項に合致していることを理解できておらず、監査員に指摘され是正処置として、悪い例のような教育体系を改めて作ってしまっているケースがあります。如何にISO要求事項の趣旨を読み解き、自社の実務と結び付け、審査対応できるようにするのか、ISO事務局の腕の見せ所です。