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廃棄物焼却炉のダイオキシン管理

廃棄物焼却炉のダイオキシン管理

廃棄物の定義は「不要なもの」であり、それを焼却する施設は廃棄物焼却炉となります。廃棄物焼却炉は、行政より廃棄物処理施設の許可を取得しなければ運転できません。許可を要する廃棄物焼却炉は、以下の2種類に分類できます。

  • ごみ焼却施設 --- 焼却能力量200kg/時以上、又は火格子面積2m2以上
  • 産廃焼却施設 1)汚泥焼却施設 焼却能力5m3/日超、200kg/時以上,又は火格子面積2m2以上 2)廃油焼却施設 焼却能力1m3/日超、200kg/時以上,又は火格子面積 2m2以上 3)廃プラ焼却施設 焼却能力100kg/時以上,又は火格子面積 2m2 以上 4)廃PCB等、PCB汚染物又はPCB処理物の焼却施設 5)産業廃棄物の焼却施設 焼却能力200kg/時以上,又は火格子面積 2m2以上

廃棄物焼却炉は、廃棄物処理法の他、大気汚染防止法、水銀汚染防止法、ダイオキシン類対策特別措置法で定められた基準を順守し、環境中に排出する排ガスや灰中の汚染物質を法令基準値以下で管理する必要があります。この中でも、最も神経を使うのがダイオキシンです。ダイオキシンは排ガスと灰の両方に法令基準値があります。測定結果が出るまで1カ月間程度、費用も数十万円掛かるので、年1~2回くらいしか測れません。また、法令基準値を超えてしまった時の対処法が非常に難しいのが実状です。本コラムでは、その対処法を紹介します。

排ガス中のダイオキシン濃度 法令基準値 超過時の対処法

ダイオキシン測定に時間が掛かるので、廃棄物処理法ではダイオキシンが排ガス中に残留しない焼却炉の運転基準(維持管理基準)が定められています。また、大気汚染防止法で排ガス中の塩化水素濃度も定められています。基準は以下です。

廃棄物処理法 廃棄物焼却炉 維持管理基準〉

①炉内炉内温度800℃以上で、炉内滞留時間2秒以上 ②集塵機前の排ガス温度は200℃以下に急速冷却 ③排ガス中のCO濃度100ppm以下 ④ダイオキシン濃度が基準値以下になるよう焼却

大気汚染防止法の基準〉

  • 排ガス中の塩化水素濃度700mg/Nm3

上記①~③の燃焼条件と、大気汚染防止法の基準を守れば、④を順守できる訳ではありません。概ねクリアできるという目安です。ダイオキシン濃度は実際に測定してみなければ分からないのが実状です。

ダイオキシン類対策特別措置法の排出基準値は、下表のとおり廃棄物焼却炉の焼却能力と設置年月で基準値が変わります。2000年1月15日以降に設置した焼却能力4t/時以上の廃棄物焼却炉が最も厳しい値となります。この法律は大気汚染防止法に紐づいています。

ダイオキシン類対策特別措置法の基準〉

廃棄物焼却炉
焼却能力
2000年1月14日以前 (単位:ng-TEQ/Nm3 2000年1月15日以後 (単位:ng-TEQ/Nm3
4t/時以上 1 0.1
2~4t/時未満 5 1
2t/時未満 10 5

0.1ng-TEQ/Nm3は、かなり厳しい値です。廃棄物処理法の維持管理基準を順守していても、塩素含有量が多いRPF等を燃料に使うと超過する可能性があります。超過リスクがある場合は、集塵機前の煙道で活性炭や生石灰を吹き込む等の追加対策が必要です。

生石灰を吹き込む代替え措置として製紙スラッジを使う方法もあります。

万が一、測定でダイオキシン濃度が法令基準値を超過してしまった時は、速やかに管轄行政に想定される原因と対策を報告しましょう。法令基準値超過なので、行政の対応もやや厳しいものになります。恐らく、対策後のダイオキシン測定で、法令基準値以下であることを確認できるまで、廃棄物焼却炉停止を求められるでしょう。そうならないように、ダイオキシン濃度測定時の炉のコンディションには細心の注意を払う必要があります。

 

灰中のダイオキシン濃度 管理型埋立て処分 基準値超過時の対処法

焼却灰(燃えがら、ばいじん)を埋立て処分する場合、ダイオキシン類対策特別措置法で、管理型埋立て処分場で処理してよいダイオキシン濃度基準が3ng-TEQ/g以下と定められています。これを超えると、特別管理産業廃棄物となり、管理型埋立て処分場では処理できません。

しかし、ダイオキシン測定結果が出るまで1カ月掛かるので、工場構内に焼却灰を仮置きする場所もなく、過去の測定で3ng-TEQ/gを超えていない焼却灰は、現在も超えていないことを前提に、先に管理型埋立て処分場で処理しているのが実状です。

結果が出た時に、基準値を超過していると厄介なことになります。管轄行政に報告すると、埋立て場所を特定し、掘り返すよう求められます。

そうならないよう、測定する焼却灰は複数箇所から採取しバラツキを少なくしましょう。従来の測定で、ダイオキシンが高めに出ている場合は、結果が出るまで仮置きしておく。どうしても先に処分せざるを得ない場合は、特別管理産業廃棄物とみなして処分するようにしましょう。

ちなみに、一般廃棄物のごみ焼却施設の灰は、有害物質が溶出しない処置をしなければ、埋め立て処分できません。産廃焼却炉の灰より厳しいので注意しましょう。