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製紙工場の節水対策

製紙工場の節水対策

製紙は水を大量に使う産業で、紙1トン作るのに100m3の水が必要と言われています。しかし、近年、地球温暖化で日本でも雨量が少なくなってきており、水不足リスクが高まってきています。リスク回避のため、製紙工場で一般的に行われている節水対策を紹介します。 衛生用紙と段ボール原紙を並抄している工場は、紙1トン作るのに使用する水量を50m3以下に抑えることができます。

製紙工場で使用している水の種類

製紙工場で使用する水は、主に以下の3種類があります。当然、水の綺麗さは1>2>3で、使用比率もこの順です。綺麗な水の方が、品質の良い紙(汚れ欠陥が少ない)が製造でき、抄紙薬品の効きも良くなります。また、水は機械の冷却にも使われており、綺麗な水の方が水温が低く、冷却水詰まりも少ないので、機械を正常に保てます。2、3は紙の品質や機械保全面を考慮し、場所を限定して使う必要があります。

  1. 工業用水(ダム水、河川水、地下水等)
  2. 混合水(上記1と3を混ぜた水)
  3. 再生水(海や河川に放流する浄化済の排水)

紙の種類に応じた水の使い分け

一般的な紙の種類は、以下のようなものがあります。綺麗な紙の順はa>b>c>dです。綺麗な紙ほど、綺麗な水で製造する必要があります。よって、aの製造には、上記の「1.工業用水」を使います。dの製造には「3.再生水」を多く配合した「2.混合水」を使います。汚れた水で綺麗な紙を生産すると、水の汚れが紙に付着し不良品になってしまうので、このような使い分けを行います。

  1. 衛生用紙(トイレットペーパー、ティシュー等)
  2. 洋紙(コピー用紙、チラシ等の印刷用紙)
  3. 新聞用紙
  4. 段ボール原紙

多品種製造工場での水の再利用法

1つの工場で上記a~dの紙を製造すると、水を再利用し易くなります。綺麗な紙(a.衛生用紙)を生産する工程からは、綺麗な排水が出ます。この排水は低グレードの紙(d.段ボール原紙)を製造する用水に利用できます。段ボール原紙の原料は90%以上、市場から回収された段ボール古紙が使われるので、紙に小さなチリが目立ちます。よって水の汚れもこのチリに紛れ、目立たなくなるのです。 多品種を製造する工場は、紙1トン生産するために使用する用水使用量は50m3以下になります。 水の再利用イメージは下図のとおりです。

製造工程の冷却水は分離回収

製造設備の機械には、多くの冷却水を使います。これらは、抄紙機の排水と一緒にせず、分離してダム水同等として利用します。排水処理設備の負荷を下げることができ、且つ、ダム水も節約できます。混ぜれば再利用し難くなる、分ければ再利用し易い。これは廃棄物と一緒ですね。