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製紙工場の臭気を感じる時の気象条件

製紙工場の臭気を感じる時の気象条件

製紙工場は臭いというイメージがあるのではないでしょうか。その工場で何を製造しているかで、臭いの種類は全く違います。悪臭トップ4は以下です。紙の町は臭いと言われる所以は圧倒的に1が要因で、臭気排気を高い位置(高さ60m~200m)から大量に出しているため、数キロ先でも臭うことがあります。2~4は低い位置(高さ2m~10m)から発生し、排気量も少ないため、臭う範囲はせいぜい数百メートルくらいです。
1.木材チップからパルプを製造する時に発生する臭気
2.排水処理設備から発生する汚泥
3.排水処理設備から発生する湯気
4.段ボール原紙 抄紙機の乾燥工程の排気

紙の町も常に臭い訳ではありません。気象条件により臭ったり、臭わなかったりします。臭気排出量が多いと臭う頻度も多くなります。製紙工場では年々、臭気排出量を減らす改善を重ねています。では、どのような気象条件になると臭うのか、解説します。

臭いを感じない時の気象条件

製紙工場から発生する臭気排気は、30℃~90℃くらいの水蒸気に臭いが含まれたものです。温かいので、大気中で上方拡散します。冬の気温が低い時の方が、より上方拡散します。上空で限りなく大気希釈された後、地表に落下してくるので、人はほとんど臭いを感じません。

臭いを感じる時の気象条件

臭気排気が上空で大気希釈しきらず、地表に降りてきた時に臭いを感じます。

晴れた日の午前中に、大気の鉛直対流が発生する時間帯

夏であれば5時頃に日の出。7時頃から太陽が急激に地表を温め始めます温められた空気が勢いよく上昇すると、その代わりに上空の拡散途中の臭気排気が地上に降りてきます。これを大気の鉛直対流と言います。この現象は2時間程度続きます。この間に、臭気排気が降りて来るスポットにいた人は、臭いを感じます。
夏以外の日差しが弱い時期は、地表が温められるスピードが緩やかになるので、温められた空気の上昇も弱くなり、地表に降りて来る臭気排気も少なくなります。

日中と夜間の風の変わり目の時間帯

日中と夜間では、風が真逆になります。地表と海面の温度差の関係で、日中は海→陸に、夜間は陸→海に風が吹きます。要するに、昼と夜では、風向きが真逆になるのですが、その間、2時間程度掛かります。例えば、昼間に安定して海→陸の方向に流されながら上方拡散していた臭気排気が、風の変わり目の時間帯に逆方向に押し戻されます。これが地上に降りてくるので、そのスポットにいた人は臭いを感じます。

雨が降り始める直前の時間帯

雨雲が近づき、雨がポツっと落ち始める時間帯(30分程度)は、一時的に大気が下降気流になります。雨雲は冷たい空気の塊です。冷たい空気は重いので、下降してきます。それと一緒に上空の臭気排気が地上に降りて来るので臭います。雨が安定して降り始めると、上空と地上の温度差が無くなり、大気の下降が止まるので地表で臭いはしなくなります。

風速4m/s以上の時

風速4m/s以上の風が吹くと、臭気排気は上昇するより、横向きに風下に吹き流されます。大気拡散が少なくなり、横に吹き流されながら地表に降りて来るので臭います。ビル5階くらいの高い場所の方が、あまり拡散していない臭気排気がダイレクトに流れて来るので、よく臭います。
日本列島が西高東低の気圧配置になった時に、風速4m/S以上の風が吹く傾向があります。冬場はこの気圧配置になる日が多いです。また、台風の通過や、低気圧の発達等で、このような気圧配置になることもあります。

気圧が高い昼間

気圧が1010hpa以上(高気圧)で風が弱い日の昼間に、臭気排気の上昇拡散が弱まり、地表で臭いを感じます。気圧が高い時は、上空から大気が押さえつけられ、臭気排気が発生源の周囲に籠った状態になります。