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気圧が敷地境界臭気に与える影響

気圧が敷地境界臭気に与える影響

当社では、敷地境界線にセンサーガスクロを設置し、製造設備から排気している臭気を連続測定しています。センサーガスクロは、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチルを5分毎に連続測定できる測定機です。

センサーガスクロは、昼間の風向きに対し、製造設備の風下に設置しています。1カ月間の測定データを分析すると、以下のことが分かりました。 ①昼間に臭気濃度が上がる。→風向きの影響(センサーガスクロ設置位置は、昼間に製造設備の風下、夜間は風上になる。) ②午前中の気温上昇時に約2時間程度、臭気濃度が高くなる。→大気の鉛直対流の影響(暖められた地表の空気が上昇し、上空の臭気を含む空気が下に降りてくる。) ③日没の気温下降時に約2時間程度、臭気濃度が高くなる。→大気乱流の影響(日没と同時に、海と陸の温度差で風向きが海→陸方向から、陸→海方向に変わる。風向きが完全に変わるのに2時間程度かかる。この間、大気乱流が起こり、上空の臭気を含む空気が下に降りてくる。)

上記は日々、繰り返し起こる挙動です。 不思議なのは、②~③間の時間帯の挙動です。発生源からの臭気濃度や量は変わらないのに、センサーガスクロの測定値が長時間 高い日と、低い日があるのです。何が影響しているのか? 試しに、アメダスの地表気圧(当時の最高気圧)と敷地境界でメチルメルカプタンが超過した月当たりの時間率の相関を見てみました。すると意外に、気圧が高いとメチルメルカプタンの超過時間が長いという相関があったのです。(下図) 湿度とはあまり相関が見られませんでした。

気圧が高いと下降気流が強くなり、上空の臭気を含む空気が、下に降りてくる現象が起こっているようです。(下図) このような日は、敷地境界で臭気基準値超過が起こりやすくなっていると言えます。

対策は、臭気排気を減らすしかありません。敷地境界をターゲットにした場合、気圧が高いときに下に降りてくる臭気発生源を対策するのが効率的です。排出口の高さ、臭気濃度、排気温度、排気量によって、落下地点が変わってきます。気圧が高い時に、増加するセンサーガスクロ測定値成分(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル)から発生源を推定するとよいでしょう。(発生源毎の臭気成分構成は、予め把握しておく必要があります。)