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次亜塩素酸ソーダ脱臭の導入事例

次亜塩素酸ソーダ脱臭の導入事例

製紙工場から発生する悪臭4物質(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル)を脱臭するには、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤が使われます。酸化剤は他にも、二酸化塩素や過酸化水素、オゾン等がありますが、取り扱いのし易さやコスト面から、次亜塩素酸ソーダが使われるケースが多いです。当社で導入している脱臭事例を紹介します。

クラフトパルプ工程の臭気排気を脱臭

クラフトパルプ製造工程から発生する臭気排気は、蒸解工程→精選工程→洗浄工程の順に、濃度が薄くなります。蒸解工程、精選工程の排気は臭気濃度が高いので、ボイラーの燃焼エアに混ぜて焼却処理します。洗浄工程の排気は、ボイラーに余力があれば焼却処理するのがベストです。しかし、余力が無い工場の方が多く、一般的に大気放出されています。また、クラフトパルプ蒸解薬品を再生する製薬工程の排気も大気放出されています。

大気放出しているこれらの排気は、大気拡散条件がよい日は地表に落下する濃度が低く、臭いません。しかし、大気拡散が悪い日、例えば、気温が高く無風の日(臭気が滞留する)、冬場の強風の日(臭気が大気希釈されず風下に流される)は、臭気落下地点で臭います。これらは、やはり発生源で脱臭しかありません。脱臭剤として使いやすいのが次亜塩素酸ソーダです。

次亜塩素酸ソーダ濃度300ppm程度の水溶液を排気にシャワー散布することで、メチルメルカプタン濃度を20ppm→10ppmに半減できます。更に脱臭したい場合は、次亜塩素酸ソーダ濃度を上げます。脱臭後のメチルメルカプタン濃度をゼロにする必要はなく、大気拡散を考慮し、どこまで脱臭するかを決めます。

排水処理設備の臭気を脱臭

排水処理設備から発生する臭気の主成分は硫化水素です。排水が温かい程、湯気と一緒に硫化水素が揮発します。この湯気も、大気拡散が悪化すると付近に滞留し、敷地境界で基準値超過になってしまいます。

次亜塩素酸ソーダ濃度1,000ppm程度の水溶液を湯気に噴霧することで、硫化水素0.04ppm→0.015ppmに脱臭できます。水温が高くなるほど、湯気の量も多くなるので、次亜塩素酸ソーダ濃度も上げます。脱臭後の硫化水素濃度をゼロにする必要はなく、大気拡散を考慮し、敷地境界で基準値以下になるよう調整します。

硫化水素の除去に有効な薬品として苛性ソーダがありますが、アルカリ性が強く、皮膚への浸透性が高いので危険です。空中散布するような用途には使わない方がよいです。苛性ソーダは密閉性が高い場所で使用しましょう。

気圧と大気拡散の関係性

春~秋は風が弱く高気圧に覆われる日が多くなります。気圧が高いと大気は下降気流になり、地表に臭気が滞留し易くなります。センサーガスクロで敷地境界の臭気を連続測定し、5月~8月まで気圧との相関を調べたところ、5月の気圧が最も高く(1012hpa)、敷地境界の臭気基準値超過 累積時間が最も長くなりました。その後、気圧は徐々に下がり8月は1007hpaになりました。気圧低下と共に、敷地境界の臭気基準値超過 累積時間も徐々に低下しました。気圧は、大気拡散の良し悪しを判断する有力な情報になります。