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センサーガスクロによる臭気発生源調査

センサーガスクロによる臭気発生源調査

工場に複数の臭気発生源がある場合、個々の排気をガスクロマトグラフィーで測定し、臭気濃度が高く排気量が多い箇所から優先的に対策するのが王道です。しかし、臭気は気象条件(風向・風速、気圧、天候、気温)の影響をかなり受けるので、近隣で臭う日もあれば、臭わない日もあります。改善に取り組むには、臭う日がどれくらいあるのか数値化する必要があります。

この数値化に役立つのがセンサーガスクロです。センサーガスクロは、ガスクロマトグラフィーの簡易版です。悪臭3成分(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル)であれば、測定時間を2時間→5分に短縮できます。また、自動サンプリング機能もあるので、これまで不可能だった悪臭3成分の連続測定ができます

臭気発生源は分かっているが、全部実施するには費用と期間が掛かる。どこから手を付けると敷地境界での臭気協定値超過時間を減らすのに有効なのか悩んでいる工場は多いと思います。このコラムではセンサーガスクロを使った臭気発生源調査法を紹介します。

センサーガスクロ設置場所

センサーガスクロ設置位置は、昼間に臭気発生源の風下になり、臭気クレームが多い場所を選定します。昼間の方が気温が高く大気拡散が悪化するので、昼間、風下になる場所で、更に臭気が落下してくる位置に測定機を設置します。要するに、地上で臭気検知頻度が最も高い場所に測定機を設置します。ここを定点とし、センサーガスクロで連続測定します。通常、高さ20m付近から放出している臭気排気は、100m程、離れた場所で臭う頻度が高い傾向があります。

測定データの整理

住民が臭いを感じる時間をゼロにするのが、臭気改善のゴールです。よって、臭いを感じる時間数を、センサーガスクロ測定値から読み取る必要があります。メチルメルカプタンであれば、濃度基準値0.002ppmを超えた時間数を集計します。センサーガスクロは5分毎のバッチ測定なので、1点超えると5分間超過という仮定で計算します。この方法で1日当たり、又は1カ月当たりの超過時間や超過率を集計すると、季節的要因や臭気改善の効果が見えてきます

〈集計事例〉
・センサーガスクロのメチルメルカプタン0.002ppmが1日30点超過した場合
30点×5分=150分/日、 1日当たりの超過率 150分 ÷ (60分×24時間) = 10%

モニタリング実績事例

当社の敷地境界でセンサーガスクロによる連続測定をした結果は、以下となりました。季節的要因や臭気対策の改善効果が数値で把握できました。

メチルメルカプタンの超過率は5月30%、6月20%。5月の方が晴れで気温が高い日(気圧が高い日)が多く、超過率が高かった。(これまで、梅雨時期の方が超過率が高いのではないかと推定していましたが、予想外の結果になりました。気圧が高い晴れた日の方が、排気が下降し超過率が高くなるようです。)

・7月に臭気発生源1箇所の減臭対策実施。それを境に、メチルメルカプタン超過時間が150分/日→50分/日に減少。効果を確認できた。臭気発生源は、あと3箇所ある。それぞれの発生源が停止した時のメチルメルカプタン超過時間を確認することで、各々の影響度を確認できると思われる。影響度の大きい順に減臭対策を進める方針。

・今回のモニタリングで、風量の大きいベンチレーター排気(1,000m3/min)の臭気が、敷地境界に影響を与えていることが分かった。ベンチレーター排気の臭気濃度は低いので、臭気濃度が高い排気に比べ、影響度が低いと考えていた。臭気濃度ではなく、臭気物質量が多い(濃度×排気量)方が影響度が大きくなることに、改めて気付かされた。