ISOconsulのブログ

企業の環境実務者必見!

次亜塩素酸ソーダ散布脱臭

次亜塩素酸ソーダ散布脱臭

工場から発生する臭気は、住民クレームや敷地境界 臭気濃度 基準値超過を引き起こします。濃度の高い臭気は、高額な費用を掛け、臭気成分に適した専用の脱臭装置を設置し対策します。しかし、濃度が薄い臭気は、そこまで費用を掛けられず、大気放出し拡散している工場が多いのではないでしょうか。

大気拡散は、季節や天候に左右され、気象条件が悪いと地表で臭いを感じ、臭気クレームが発生します。本記事では、濃度が薄い硫黄系の臭気について、次亜塩素酸ソーダを用いた安価な脱臭対策を紹介します。
※濃度が薄い硫黄系臭気とは、悪臭4物質と言われる硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化ジメチルについて、敷地境界に到達する頃には、悪臭防止法の敷地境界基準値濃度(1号基準)程度まで希釈されることを前提にして大気放出している臭気と定義します。

次亜塩素酸ソーダ脱臭について

次亜塩素酸ソーダは塩素系除菌漂白剤の主成分で、一般的に殺菌・消毒を目的として上下水道や食品に対して使用される化学物質です。水道水にも1ppm程度含まれており、低濃度で使うと、比較的安全性が高いと言えます。

この次亜塩素酸ソーダは硫黄系臭気を酸化し脱臭します。脱臭には一般的にスクラバーが使われます。スクラバーとはタンク内で、臭気と次亜塩素酸ソーダを向流接触させる装置です。この装置を使うと完璧に脱臭できますが1,000万円程度の費用が掛かるため、工場存続に関わるような悪臭対策でないと導入されません。

そこで、安価に導入できる脱臭対策として、次亜塩素酸ソーダの空中噴霧があります。濃度1%以下の次亜塩素酸ソーダを霧状に散布し、空気中に漂っている硫黄系臭気と接触反応させます。臭い発生源付近で噴霧すると、臭気と一緒に拡散しながら反応するので効果的です。
当社の経験では、噴霧により硫化水素濃度は0.08ppm→0.02ppmまで下がりました。発生源の傍でここまで下がれば、敷地境界に到達するまでに更に希釈されるため、1号基準をクリアできます。必ず霧状ノズルを使ってください。水滴が大きいと臭気との接触効率が下がり効果が出にくくなります。この装置だと100万円以下で設置できます。
ただし、濃度1%の次亜塩素酸ソーダを噴霧すると、周辺にプールや漂白剤のような臭いがします。この臭いがクレームになりそうな場合は、濃度を薄める必要があります。

その他の脱臭方法

消臭剤
芳香系の臭いで、硫黄系悪臭をごまかす方法
です。嗅覚には効果がありますが、悪臭成分の濃度は、ほとんど変わらないので、行政の立ち入り検査等で臭気濃度測定される場合は、効果がありません。消臭剤の価格は、次亜塩素酸ソーダの10倍以上します。

オゾン脱臭
オゾンで臭いを分解する方法です。身近なところではホテルの客室清掃時に、オゾン脱臭機を使用する事例があります。オゾンは有害なので、オゾン脱臭機は無人状態にして使います。金属腐食性も高いので、精密機器がある部屋での使用は控えた方がよいです。

触媒脱臭
銀等の金属成分で臭いを分解する方法です。分解スピードがゆっくりなので、一気に大量の臭気を処理するような場所での使用は不向きです。

活性炭脱臭
活性炭の微細な空隙で臭気成分を捉え脱臭する方法です。これも分解スピードがゆっくりです。活性炭は定期的に交換する必要があり、ランニングコストがかなり掛かります。

生物脱臭
臭い成分によって最適な菌種が臭いを分解する方法です。硫化水素は比較的分解されやすく、反応速度は数十秒程度です。培地を湿らせて保温し、菌が活動しやすい環境を維持する必要があります。維持管理費が安いため、下水処理場等、濃度が薄い臭気が出る箇所に多く導入されています。当社では培地にポーラスαを導入しています。劣化がないのが特徴で、設備費、維持管理費が安いです。