ISOconsulのブログ

企業の環境実務者必見!

コスパに優れた微生物脱臭

コスパに優れた微生物脱臭

工場から発生する臭いについて、近隣住民の要求度は段々、上がってきています。脱臭には設備が必要で、それにはイニシャルコストとランニングコストが掛かります。工場は、これらの公害防止コストは最小限に抑えたいものです。臭いの質や量に応じ、最適な脱臭設備を選定し、公害防止コストを抑えましょう。本記事では、排水処理設備から発生する硫化水素主体の臭気を安価に処理できる微生物脱臭について紹介します。

脱臭設備の選定

①スクラバー式
どんな臭いにでも対応できるのが、スクラバー式です。スクラバーとは、タンクのような容器の中で薬品と臭気を向流接触させ、臭気成分を分解する方法です。処理量に応じタンク容量を決め、更に、臭いの質(成分)に応じ接触させる薬品を決めます。薬品は一般的に硫化水素には苛性ソーダ、その他の成分には酸化剤(塩酸、次亜塩素酸ソーダ、二酸化塩素、オゾン等)が使われます。この2つ(タンク容量と薬品)を設計することで、ほぼ100%脱臭できます。
一方、デメリットはコストです。イニシャルコストとして、タンク、臭気押し込みファン、薬品循環ポンプ、配管類、充填材、廃液処理設備に数千万円。ランニングコストとして薬品費、廃液処理費が数百万円/月、要ります。タンクや配管は耐薬品製の材質を選定しなければならないので、必然的に高価になります。
かなりのコストが掛かるので、工場経営に必須の臭気対策でなければ、なかなか導入できません。

②微生物脱臭式
微生物脱臭は、オールマイティーな脱臭法ではありません。量は多いが臭気濃度が低い家畜系の糞尿の臭いや、排水処理設備の臭いは、安価に脱臭できます。微生物は土壌にも生息しています。極端な話、臭気を土壌に通すと脱臭できるのです。これを持続的に脱臭できるよう設計したのが微生物脱臭装置です。臭気カット率は成分にもよりますが70%~90%くらいです。臭いは若干残りますが、嫌な臭いはほぼ取り除けます。後は大気拡散すると工場周辺では、ほぼ臭いは感じなくなります。
コストは、イニシャルコストとして、タンク、臭気押し込みファン、配管類、充填材に数百万円。ランニングコストとして水道代数万円/月です。薬品を使わないので、タンクや配管の材質は安価な樹脂製で構いません。
スクラバー式に比べ、かなりコストが抑えられるので、お勧めです。

微生物脱臭式の仕組み

微生物脱臭とは、微生物が臭気成分を分解してくれる脱臭法です。微生物の住家(充填材)に30℃前後の臭気を通します。臭気カット率90%以上に必要な滞留時間は20~30秒程度です。臭気を通すと充填材が乾燥するので、ビショビショにならない程度に定期的に充填材に散水します。微生物の餌は臭気成分です。1日くらいの餌切れは大丈夫ですが、基本的に臭気は連続的に通しておく必要があります。
微生物は生き物なので、水槽で金魚を飼うかのごとく扱ってあげましょう。

スクラバー式は化学反応を利用した脱臭なので、断続運転でも薬品さえ添加すれば機能します。しかし微生物脱臭は、生物をいつも元気な状態に保っておく必要があるので連続運転が基本です。よって、連続運転している排水処理設備の臭気処理に向いている脱臭法と言えます。

微生物処理 充填材の選定

微生物は微細な隙間に住み着きます。チップダストや繊維、ゼオライト等、保水性がある多孔質な材質であればなんでも充填材になります。注意しなければならないのは、充填材の耐久性です。有機質の充填材は徐々に朽ちるので、数年ごとに補充や入れ替えが必要です。耐久性があるほど、メンテナンス周期が延び維持管理費が安くなります
近年、半永久的に使えるポーラスαという小石大(約3cm)くらいのガラス発泡材が注目されています。ガラス発泡材は、庭の防犯対策の敷石(踏むとジャリジャリと大きな音が出る)にも使われていますが、ポーラスαとは全く性能が違います。ポーラスαは多孔質の穴が貫通しており、高い通気性があります。また、保水力が高く微生物の絶好の住家を作ります
ゼオライトとは沸石とも呼ばれ、粘土鉱物の一種でミクロ多孔性の結晶性アルミノケイ酸です。

ポーラスαの性能

当社は排水汚泥を脱水処理する設備から発生する臭気をポーラスαで脱臭しています。ポーラスαと曝気槽の活性汚泥を混ぜ、タンク容量の80%に充填しています。下から臭気をファンで押し込み、充填材を通過させ、上方から排気しています。充填材の上からは、断続的に水を散水し保湿しています。5年間、メンテナンスフリーで連続使用していますが、性能はずっと維持できています。

脱水処理設備の排気は、硫化水素20ppm、メチルメルカプタン5ppm程度です。ポーラスαで処理後は、硫化水素2ppm(カット率90%)、メチルメルカプタン1.5ppm(カット率70%)です。臭気排気が充填材に接触する滞留時間は約20秒です。硫化水素に比べ、メチルメルカプタンは、ややカット率が下がります。処理後の排気は少しカビ臭いですが、硫化水素の嫌な臭いはなくなっています。このくらい除去できていると、大気中に放出しても敷地境界で臭いは全く気になりません

メチルメルカプタンを更に除去したい場合は、脱臭タンクを直列に2個繋ぎ、最初の脱臭タンクの排気を、次の脱臭タンクに通します。するとカット率は90%以上になります。ポーラスαに住む微生物は、通す臭気成分に対応したものが繁殖します。よって、最初の脱臭タンクの微生物と、次の脱臭タンクの微生物は、違う種類のものが繁殖しています。

当社はポーラスαを硫化水素とメチルメルカプタンの脱臭に使っていますが、家畜の糞尿臭(主にアンモニア臭)にも多用されています。

安価に、そこそこ脱臭したいというニーズにポーラスαは最適な脱臭法と言えます。