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連続粉塵計による住民クレーム予防

連続粉塵計による住民クレーム予防

粉塵飛散は環境住民クレームとして多い部類の一つです。以下のようなものがクレーム源となります。 ①建屋の排気口から粉塵飛散 ②屋外の堆積場や、運搬トラック、荷役重機からの原材料や産廃の粉塵飛散 ③未舗装の土場や、工事現場からの土埃 粉塵が飛散しないように、集塵機設置や散水等で予防を図っていますが、集塵機のトラブルや散水不足等で気づかないうちに飛散してしまう場合があります。特に②,③は人で定期散水しているケースが多く、散水のタイミング遅れでクレームが発生する確立が高いです。 適切なタイミングで散水したり、集塵機トラブルによる飛散を社内で早く気づき、対処できるようにするには、粉塵計で連続モニタリングし管理値超過でアラーム発報する仕組みの導入が効果的です。本コラムでは、当社で導入している粉塵モニタリングシステムを紹介します。

建屋の排気口からの粉塵飛散対策

粉塵濃度が高い排気は通常、除塵装置で除去後、建屋の外に排出します。除塵装置が正常でないと排気中の粉塵濃度が上がり、住民クレーム要因になります。よって、除塵装置が正常か判断する常時モニタリング法を確立しておく必要があります。

排気口の粉塵濃度で判断する方法

煙道に粉塵濃度計を設置し、連続測定することで除塵装置の異常に早く気づく方法があります。除塵装置には乾式と湿式があるので、それぞれに対応した粉塵濃度計を選定します。乾式の方が比較的測定し易いので安価に導入できます。湿式は排気を一度乾かしてから測定するのでヒーター付きの除塵濃度計となり、測定器の値段は高価になります。

除塵装置の操業因子で判断する方法

例えば、サイクロン式の除塵装置の場合、入口と出口の差圧で除塵効率を判断する方法があります。湿式スクラバー式の場合は、粉塵を叩き落とすシャワー流量で判断する方法もあります。何れも、除塵効率と因果関係が強い操業因子をモニタリングし判断するため、それがどのくらい排気中の粉塵濃度に影響したかは分かりません。しかし、粉塵濃度計を設置するより、安価にモニタリングできるメリットがあります。

屋外で発生する粉塵飛散対策

屋外で発生する粉塵は、散水で対策する場合が多いです。しかし、乾くとまた飛散するため、定期的に行う必要があります。この「定期的に」がくせ者で、住民は少しでも粉塵が飛んできて、車や洗濯物が汚れると文句を言います。一方、散水する事業者側は、これで完全に飛散を抑えられる訳がなく、ある程度、抑えればよいというスタンスで実施しています。この双方のギャップがクレームを誘発させます。このギャップを埋める方策が、粉塵計による連続モニタリングです。散水を1時間毎に行うのではなく、粉塵濃度で散水する方法に変えるのです。

当社は焼却灰堆積場に粉塵濃度計(柴田科学 デジタル粉塵計LD-5D型)を設置し、連続測定しています。焼却灰堆積場から粉塵が発生するケースは以下の時です。 ①トラックから灰を荷下ろしする時 ②ホイールローダーでトラックに灰を積む時 ③トラックが堆積場内を走行する時

上記①~③で発生した粉塵が風下に流された時に、粉塵濃度計で検出するようにしています。粉塵は、1分間当たりの累積粒数を計測します。①~③で発生した粉塵粒数は、数分間、連続で高くなることはなく、数分に1回、単発で上昇するようなトレンドになります。これを関係者に、どのようにアラーム通知するのか考えた結果、「1分間当たりの累積粒数が20個以上になった回数が、10分間に2回以上、発生」した時にアラーム発報するようにしました。アラームが多すぎると無視されるので、適度な頻度になるよう設定値の工夫が必要です。

上記の運用で、今のところ、アラーム発報回数は週1回程度です。船出荷等で灰置場での作業量が多い時に発報されており、作業者が散水するタイミングの目安になっています。 測定機が住民に代わりモニタリングしてくれているという意識で活用すると、作業者や管理部門の刺激となり、住民クレームを予防できるようになります。

測定機導入には、賛否両論があります。「測定してどうなるの? そんな金があるなら、対策費に使え!」という意見もあります。根本対策ができる箇所は、勿論そうすべきです。しかし、根本対策が難しい箇所は、測定機を導入し問題となる現象を見える化し、関係者全員が意識し共有できる仕組み作りを同時並行で行わないと、住民クレームは予防できません。クレームが発生している場所の実態に応じ、最適な対策を推進していく必要があります。