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低周波騒音 住民苦情への対応

低周波騒音 住民苦情への対応

音の感じ方は人によって違うため、工場敷地境界の騒音規制基準値以下でも、住民クレームが発生することがあります。当社の近隣に1名、非常に騒音を気にする方がおり、30年以上、やりとりをしています。昔は、敷地境界の傍で生産設備が稼働しており、頻繁にクレームがありました。騒音源は工場建屋から透過する設備稼働音で、敷地境界 夜間騒音協定値50dB以下ですが、低周波音が気になるとのことでした。10年前にこの設備が停止し、クレームは無くなりました。

ところが、2カ月前に久しぶりに騒音クレームがありました。就寝する部屋が1階から2階に変わり、工場の音が気になり始めた。従来からしている工場音であるが、改善してほしいとの要望があり、騒音調査を開始しました。

住民ヒアリング

住民宅は工場敷地境界から50m程、離れています。そこで音を聞くと、微かに工場の稼働音(配管内を流れる流体音(シャー音)機械の稼働音(ブーン音))が聞こえてきます。騒音値は47dB。立ち止まって耳を澄ますと、工場の音が聞こえるレベルです。私たちからすると、このくらいの音はするだろうというレベルです。

とりあえず、住民と問題の音の共有を行いました。庭先で聞こえている音で間違いないか、更に工場敷地内に案内し、私たちが発生源と考えている場所の案内をしました。案内したのは工場敷地境界から100mほど構内に入った製造設備建屋周辺です。住民から「この音で間違いない」との話がありました。流体音(シャー音)と機械の稼働音(ブーン音)のどちらが家の中まで聞こえるか質問したところ、機械の稼働音(ブーン音)との回答でした。

流体音(シャー音)は無数の配管から発生しており、範囲が広すぎます。一方、機械の稼働音(ブーン音)は発生源を特定すれば対処できる可能性があります。まずはブーン音の発生源を探すことにしました。

騒音発生源調査

まずは住民が工場敷地内で「この音で間違いない」と言った場所(定点)で、低周波騒音測定(1/3オクターブバンド分析)を行いました。次にブーン音の発生源と思われるルーツブロワーの機側で低周波騒音測定を行いました。すると波形が一致したので、ルーツブロワーの防音対策に着手しました。

ルーツブロワー機側の騒音は96dBありますが、それは広いヤードを高さ3mの壁で囲った中にあり、壁の外側ではかなり減音されています。しかし、上側はオープンなので、音が上方に抜けていました。そこで、防音シートでルーツブロワーの4面を覆い、騒音値を96dB→93dBに下げました。定点の低周波騒音測定値でも周波数帯にもよりますが、最大3dB下がりました。夏場は防音シートで囲うことで、ルーツブロワーの油温が上がり故障するリスクがあるので、送風機で冷やしながら運転しています。

上記の対策を行いましたが、聴覚では、まだルーツブロワーの音は聞こえています。仮設防音シートではこれが限界です。住民から更に改善要望があれば、騒音が少ない真空ポンプに据え替えることも検討していましたが、その後、住民からクレームはなくなったので、防音シートを本設し、これにて対策完了としました。