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工場敷地境界の臭気・騒音連続モニタリングの重要性

工場敷地境界の臭気・騒音連続モニタリングの重要性

工場で最も多い住民クレームが臭気・騒音です。通りすがりの人は、一瞬、臭気や騒音を感じても、工場に電話を掛けてまで苦情を言う人は、ほとんどいません。しかし、住民は長時間、臭気や騒音を感じるので、苦情を申し立てます。要するに、早く異常に気付き、対処すれば住民苦情にはならないのです。それには連続測定機を使ったモニタリングが非常に有効です。事例を紹介します。

苦情発生事例

1.臭気苦情

A工場に隣接した書店があり、以前より、臭気に関する苦情を断続的に受けていた。臭気源は、構内に堆積している排水スラッジと排水処理設備の排水臭。
排水スラッジは堆積期間が1週間以上経つと腐敗臭が強くなるので、短期間で焼却処理するよう努めているが、焼却炉が定期修理等で停止すると堆積期間が長くなってしまう。結果、臭気苦情が発生する。
排水臭は、夏場に水温が高くなると揮発量が増え、風下に臭いが漂う。対策として昨年まで夏場のみ硫化水素抑制剤を投入していたが、薬品メーカーから値上げ要請があり、本年は添加を止めた。結果、臭気揮発量が増え、苦情が発生した。

2.騒音苦情

近隣住民から、夜中に10分程度、工場から大きな蒸気吹き出し音がしていたとの情報提供があった。B工場には敷地境界に連続騒音計を設置しており、トレンドを確認したところ、2時間毎に上昇があった。ボイラーの操業と突き合せると、灰除去装置の作動タイミングと一致した。設備不良で作動時に蒸気がリークしていることが分かった。

連続モニタリングの有効性

B工場は「騒音」を敷地境界で連続モニタリングしていました住民から情報があってから記録を調べ、灰除去装置の異常が分かりました。情報提供の前に社内で気づき、対処しておれば、なお良かったのですが、連続測定の記録があったから短時間で原因を特定できました。今後の課題は、早く気づくための仕組みを構築することです。
騒音管理値を決め、超えるとアラーム発報するような仕組みが有効です。ただ、敷地境界のような基本的に静かな場所で管理値を設定すると、セミの鳴き声や、雨の音等、外乱でアラーム発報してしまうケースが多発します。ボイラーの機側に騒音計を設置し管理することで、外乱の影響を排除する工夫が必要になります。

A工場は「臭気」を敷地境界で連続モニタリングしていませんでしたこれを実施しておれば、堆積期間が長くなりスラッジ臭が強くなってきた時、また夏場に排水臭が強くなってきた時に、住民から苦情を受ける前に気づけたのではないでしょうか。スラッジに消臭剤を散布したり、排水への硫化水素抑制剤を添加する等の動きがとれたと思います。
工場巡回時に臭いに気づいていた従業員もいたと思いますが、よっぽどの臭いでない限り放置します。測定機にアラームを設定しておけば、それをきっかけに、行動しなければならないという心理が働きます。言わば、測定機に住民の代わりをしてもらうイメージです。操業変動や季節要因で臭気発生源の状況が変わる工場は、連続モニタリングの仕組みの導入は必須です。

連続モニタリング装置導入の注意点

連続測定機の導入に当たり、注意しなければならないのは、それを使って苦情をゼロにしたい!という強い思いを持った人がいないと、何の役にも立たないことです。測定値の分析、測定機のメンテナンス、校正等、維持管理には費用と労力が掛かります。ほったらかしにすると、測定値に信頼性がなくなり、アラームが発報されても誰も気にしなくなります。連続測定機導入にも、かなりの費用が掛かるので、決して無駄にしないようにしましょう。権力者の鶴の一声で導入したら必ず失敗します。導入は、強い思いを持った従業員が声を上げてくるまで忍耐強く待ちましょう。権力者は声が上がってくるような雰囲気作りに注力しましょう。