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製紙工場の臭気を感じる時の気象条件

製紙工場の臭気を感じる時の気象条件

製紙工場は臭いというイメージがあるのではないでしょうか。その工場で何を製造しているかで、臭いの種類は全く違います。悪臭トップ4は以下です。紙の町は臭いと言われる所以は圧倒的に1が要因で、臭気排気を高い位置(高さ60m~200m)から大量に出しているため、数キロ先でも臭うことがあります。2~4は低い位置(高さ2m~10m)から発生し、排気量も少ないため、臭う範囲はせいぜい数百メートルくらいです。
1.木材チップからパルプを製造する時に発生する臭気
2.排水処理設備から発生する汚泥
3.排水処理設備から発生する湯気
4.段ボール原紙 抄紙機の乾燥工程の排気

紙の町も常に臭い訳ではありません。気象条件により臭ったり、臭わなかったりします。臭気排出量が多いと臭う頻度も多くなります。製紙工場では年々、臭気排出量を減らす改善を重ねています。では、どのような気象条件になると臭うのか、解説します。

臭いを感じない時の気象条件

製紙工場から発生する臭気排気は、30℃~90℃くらいの水蒸気に臭いが含まれたものです。温かいので、大気中で上方拡散します。冬の気温が低い時の方が、より上方拡散します。上空で限りなく大気希釈された後、地表に落下してくるので、人はほとんど臭いを感じません。

臭いを感じる時の気象条件

臭気排気が上空で大気希釈しきらず、地表に降りてきた時に臭いを感じます。

晴れた日の午前中に、大気の鉛直対流が発生する時間帯

夏であれば5時頃に日の出。7時頃から太陽が急激に地表を温め始めます温められた空気が勢いよく上昇すると、その代わりに上空の拡散途中の臭気排気が地上に降りてきます。これを大気の鉛直対流と言います。この現象は2時間程度続きます。この間に、臭気排気が降りて来るスポットにいた人は、臭いを感じます。
夏以外の日差しが弱い時期は、地表が温められるスピードが緩やかになるので、温められた空気の上昇も弱くなり、地表に降りて来る臭気排気も少なくなります。

日中と夜間の風の変わり目の時間帯

日中と夜間では、風が真逆になります。地表と海面の温度差の関係で、日中は海→陸に、夜間は陸→海に風が吹きます。要するに、昼と夜では、風向きが真逆になるのですが、その間、2時間程度掛かります。例えば、昼間に安定して海→陸の方向に流されながら上方拡散していた臭気排気が、風の変わり目の時間帯に逆方向に押し戻されます。これが地上に降りてくるので、そのスポットにいた人は臭いを感じます。

雨が降り始める直前の時間帯

雨雲が近づき、雨がポツっと落ち始める時間帯(30分程度)は、一時的に大気が下降気流になります。雨雲は冷たい空気の塊です。冷たい空気は重いので、下降してきます。それと一緒に上空の臭気排気が地上に降りて来るので臭います。雨が安定して降り始めると、上空と地上の温度差が無くなり、大気の下降が止まるので地表で臭いはしなくなります。

風速4m/s以上の時

風速4m/s以上の風が吹くと、臭気排気は上昇するより、横向きに風下に吹き流されます。大気拡散が少なくなり、横に吹き流されながら地表に降りて来るので臭います。ビル5階くらいの高い場所の方が、あまり拡散していない臭気排気がダイレクトに流れて来るので、よく臭います。
日本列島が西高東低の気圧配置になった時に、風速4m/S以上の風が吹く傾向があります。冬場はこの気圧配置になる日が多いです。また、台風の通過や、低気圧の発達等で、このような気圧配置になることもあります。

気圧が高い昼間

気圧が1010hpa以上(高気圧)で風が弱い日の昼間に、臭気排気の上昇拡散が弱まり、地表で臭いを感じます。気圧が高い時は、上空から大気が押さえつけられ、臭気排気が発生源の周囲に籠った状態になります。

産廃処分委託契約書作成のコツ

産廃処分委託契約書作成のコツ

廃棄物処理法で、産廃処理を他人に委託する時は、契約を書面で交わさなければならないことが定められています。

〈施行令 第6条の2第4号〉
委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。

産廃委託契約書は、公益社団法人 全国産業廃棄物連合会作成の標準様式を使うのが一般的です

産廃委託契約書の雛形

契約書雛形に記入する時のポイントを以下に解説します。

処分委託契約書作成のポイント

第2条(委託内容)、1(乙の事業範囲)

「処分に関する事業範囲」には産廃処分業者が取得している許可内容を記載しましょう。委託する産廃の種類を事業範囲の欄に記載しましょう。すべての欄に"許可証のとおり"と記載するのは、あまりお勧めしません
産廃と特管で許可証が違います。両方を委託する場合は、それぞれ別欄に記載しましょう。

第2条(委託内容)、2(委託する産業廃棄物の種類、数量、単価)

産廃の種類は、許可証と同じ言葉で記載しましょう。
数量は、おおよそでも構いません。
単価は、上段の数量の単位と合わせましょう。契約に第三者が介入し、口銭が発生することがあります。この場合、口銭を含んだ単価記載は、廃棄物処理法で禁止されています。口銭は覚書に明記しましょう。
・甲、乙、第三者間で口銭が公になっている場合は、上記の方法でよいのですが、排出事業者に口銭非公開で契約するケースの方が圧倒的に多いです。その場合、法的にグレーになってしまいますが、本基本契約書に口銭込みの単価を記載せざるを得ません。口銭抜きの単価を、第三者(代理店)と処理業者の覚書で明確にしましょう。
・数量と単価を掛けた額が、本契約書の請負額になります。その請負額に応じた印紙を表紙に添付する必要があります。通常、契約数量は「100t/年」等と記載しますが、100t/年~200t/年としても構いません。その場合の本契約書の請負額は、"100t/年×単価"になります。

第2条(委託内容)、4(処分の場所、方法及び処理能力)

処分委託する産廃を処理してもらう事業場名、住所、処分の方法、処理能力を許可証から転記しましょう。敷地に複数の住所がある場合産廃処分許可証には、処理施設毎に住所を記載しています。その場合は、事業所の代表住所を記載するとよいでしょう。
産廃の種類は、委託する産廃業者の許可証に記載されている名称と同じ言葉で記載しましょう。
・各項目に「許可証のとおり」を多用している事例がありますが、あまりお勧めしません。

第2条(委託内容)、5(最終処分の場所、方法及び処理能力)

最終処分とは、埋立て処理のことです。例えば、今回、パレットの破砕処理(中間処理)を委託するとします。破砕後の木くずは燃料になります。木片付きの釘等の残渣は、中間処理業者のごみとして、埋立て処分業者に委託されます。この場合、第2条5には埋立て処分業者の情報を記載します。

処分委託した産廃を中間処理する過程で、一切、埋立て処分する残渣が発生しない場合、ここへの記載は不要です。その場合、「甲から、乙に委託された産業廃棄物は全量、有効利用されるため最終処分はない。」と雛形の文言を変更します。

第2条(委託内容)、6(搬入業者)

本契約に関わる収集運搬業者の情報を記載します。県内で処分する場合は、その県の収集運搬業者の許可証の情報を記載します。県外で処分する場合は、排出事業者の県と、処分業者の県の両方の情報を記載します。「許可証のとおり」の記載は極力せず、許可証の該当事項を具体的に記載することをお勧めします。

第3条(適正処理に必要な情報の提供) 5項

産廃に含まれる金属等の検定方法」による試験を行い、分析証明書を乙に提出する、「産廃の種類」「提示する時期又は回数」は以下のように記載しましょう。
産廃の種類」は、委託する産廃の種類を、許可証の言葉で記載しましょう。
「提示する時期又は回数」は、「乙の要求に応じ」と記載しましょう。乙と「年1回〇月に提示」等の合意がある場合は、そのように記載しましょう。

第9条(報酬・消費税・支払い)

ここは各社が処理委託料支払いについて、自社の業務スケジュール等を鑑み条項を修正します。
・委託重量は、甲乙どちらの検量機を正にするか明記しましょう。
・1項の「毎月一定の期日を定めて処分業務の報酬を支払う」の、"一定の期日を定めて"は、双方、トラブルが発生しないよう、もっと具体化しておきましょう。「毎月、第3営業日までに前月の請求書を乙から甲に提出する。甲は当月月末までに請求書に基づき費用を支払う。銀行振込み手数料は甲が負担する。」のような記載にするとよいです。

報酬の支払いについて、稀に三者(代理店)が介入するケースがあります。三者を「丙」とし、本契約を締結すると廃棄物処理法違反になるので、第三者の名称を具体的に記載し、本契約との関りを明確にしておきましょう。(廃棄物処理法では、委託契約書は2者間で締結するよう定めています。)

文末

「本書2通を作成し、甲乙、各1通を保管」は、「本書1通を作成し、原本は甲が、乙はその複写を保管」でもよいです。そうすると表紙に添付する印紙が1枚で済み、費用を削減できます。印紙額は甲乙、折半しても構いません。

また、近年、電子契約も多くなってきています。その場合、「それぞれ電子署名を行い、各自その電磁的記録を保管する。なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする。」という文面に修正するとよいでしょう。電子契約は印紙不要です。

産廃収集運搬委託契約書作成のコツ

産廃収集運搬委託契約書作成のコツ

廃棄物処理法で、産廃処理を他人に委託する時は、契約を書面で交わさなければならないことが定められています。

〈施行令 第6条の2第4号〉
委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。

産廃委託契約書は、公益社団法人 全国産業廃棄物連合会作成の標準様式を使うのが一般的です

産廃委託契約書の雛形

契約書雛形に記入する時のポイントを以下に解説します。

収集運搬委託契約書作成のポイント

第2条(委託内容)、1(乙の事業範囲)

・「収集運搬に関する事業範囲」には、産廃収集運搬業者が産廃を搬出する県と、搬入する県で取得している許可内容を記載しましょう。委託する産廃の種類を事業範囲の欄に記載しましょう。すべての欄に"許可証のとおり"と記載するのは、あまりお勧めしません。
契約書に記載するのは、産廃搬出(排出事業者)、搬入(処理業者)の2つの所在県名です。道中、通過する県は記載不要です。

第2条(委託内容)、2(委託する産業廃棄物の種類、数量、単価)

産廃の種類は、許可証と同じ言葉で記載しましょう。
数量は、おおよそでも構いません。
単価は、上段の数量の単位と合わせましょう。
・数量と単価を掛けた額が、本契約書の請負額になります。請負額に応じた印紙を表紙に添付する必要があります。通常、契約数量は「100t/年」等と記載しますが、100t/年~200t/年としても構いません。その場合の本契約書の請負額は、"100t/年×単価"になります。

第2条(委託内容)、4(運搬の最終目的地)

運搬の最終目的地は、処分業者の情報を記載します。
・「住所」と「所在地」の欄があります。「住所」は本社の住所、「所在地」は実際に産廃を処理する処分場の住所を記載しましょう。敷地に複数の住所がある場合産廃処分許可証には、処理施設毎に住所を記載しています。その場合は、事業所の代表住所の方を記載するとよいでしょう。
産廃の種類は、委託する産廃業者の許可証に記載されている名称と同じ言葉で記載しましょう。
・各項目に「許可証のとおり」を多用している事例がありますが、あまりお勧めしません。

第3条(適正処理に必要な情報の提供) 5項

産廃に含まれる金属等の検定方法」による試験を行い、分析証明書を乙に提出する、「産廃の種類」「提示する時期又は回数」は以下のように記載しましょう。
産廃の種類」は、委託する産廃の種類を、許可証の言葉で記載しましょう。
「提示する時期又は回数」は、「乙の要求に応じ」と記載しましょう。乙と「年1回〇月に提示」等の合意がある場合は、そのように記載しましょう。

第9条(報酬・消費税・支払い)

ここは各社が処理委託料支払いについて、自社の業務スケジュールを鑑み条項を修正します。
・委託重量は、甲乙どちらの検量機を正にするか明記しましょう。
・1項の「毎月一定の期日を定めて収集・運搬業務の報酬を支払う」の、"一定の期日を定めて"は、双方、トラブルが発生しないよう、もっと具体化しておきましょう。「毎月、第3営業日までに前月の請求書を乙から甲に提出する。甲は当月月末までに請求書に基づき費用を支払う。銀行振込み手数料は甲が負担する。」のような記載にするとよいです。

文末

「本書2通を作成し、甲乙、各1通を保管」は、「本書1通を作成し、原本は甲が、乙はその複写を保管」でもよいです。そうすると表紙に添付する印紙が1枚で済み、費用を削減できます。印紙額は甲乙、折半しても構いません。

近年、電子契約書が普及してきています。電子契約書の場合は、上記の文面は「それぞれ電子署名を行い、各自その電磁的記録を保管する。なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする。」に書き換えます。電子契約の場合、印紙は不要です。

産廃取引先 現地確認の重要性

産廃取引先 現地確認の重要性

廃棄物処理法には以下の規定があり、産廃委託先の処理状況確認が義務付けられています。産廃発生量が少ない会社ほど、この義務は守られていないのが実情です。ごみは回収してくれたら、それで良しとしていたら、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。なぜなら、産廃委託先が、そのごみを不法投棄した場合、原状回復費用を産廃委託先が支払えないと、排出事業者にも費用負担が生じる恐れがあります。このような事態を避けるため、処理状況確認は必ず実施するようにしましょう。本コラムでは、処理状況確認方法について解説します。

廃棄物処理法第12条第7項抜粋)
事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

産廃委託先の処理状況の確認方法

産廃委託先の処理状況の確認は、以下の方法があります。確認頻度やチェック内容は、廃棄物処理法に定められておらず、各事業者に委ねられています。確認頻度は社内基準で年1回にし、契約更新前までに実施するルールにしておくと、継続し易くなります。チェック内容は環境省が公開しているリストが参考になります。(下記リンク参照)
https://www.env.go.jp/content/000126051.pdf

  1. 現地へ行って確認する(リモート確認も可)
  2. 優良産廃処理業者認定制度に基づく開示情報で確認する

1.現地へ行って確認する

委託先の産廃処分業許可証を元に現地へ行って、現場現物で確認するのが最もよい方法です。
産廃処理場で最も気をつけなければならないのは、近隣住民と騒音や臭い等のトラブルを抱えていないか、大気汚染防止法水質汚濁防止法の基準を超えるような排ガスや排水を放出していないか、です。処分場周辺に住民と対立しているような立て看板や旗が立っていたり、悪臭や汚染水が流れているような状況があれば、産廃委託するのは止めましょう。これらは現地に行くと一目で分かります。環境省推奨のチェックリストに基づきチェックするのは、二の次です。

2.優良産廃処理業者認定制度に基づく開示情報で確認する

優良産廃処理業者認定制度とは、環境省の認定基準に合致した産廃業者に「優良」を与える制度です。認定基準は以下です。「優良」を取得した産廃業者の許可証には、㊝のマークが入っています。

認定基準概要 内   容
実績と遵法性 5年以上の事業実績があり、その間に改善命令等の不利益処分を受けていないこと。
事業の透明性 許可の内容や過去3年間の処分の受託量など定められた情報をインターネットで一定期間継続して公表していること。
環境配慮の経営 ISO14001エコアクション21等の認証を受けていること。
電子マニフェスト 排出事業者から要望があった場合に電子マニフェストが利用可能であること。
健全な財務体質 自己資本比率や経常利益等が一定の基準を満たしていること。

認定基準「事業の透明性」に、インターネットでの情報公開があります。優良事業者認定を取得した産廃業者は、(公)産業廃棄物処理事業振興団体が運営する「産廃情報ネット」で、求められている項目を情報公開しています。排出事業者は、この内容から環境省のチェックリストを埋め、産廃処理状況の確認を行う方法です。

条例で、優良事業者認定を取得している産廃業者の処理状況確認は省略できると明記している都道府県もありますので、一度、確認してみるとよいでしょう。

産廃契約締結・更新の社内決裁ルールを決めましょう

産廃業者の処理状況確認結果は社内の会議体で報告され、産廃業者との新規契約や、契約継続を会社として決裁するルールを決めておきましょう。
産廃契約書には社長や工場長等、然るべき立場の人が捺印しますが、定期的な現地確認結果や、継続可否判断等は、担当者任せになっている会社があります。そのような会社は、産廃委託先がトラブルを起こし、自社もそれに巻き込まれてから対処するような事態になります。現状復帰費用を負担するようなことになれば、経営に多大なダメージを受けます。
産廃は法令違反で検挙される数が最も多い環境法令です。産廃契約締結や更新時は、必ず産廃処理状況の確認結果を社内審議し、決裁するプロセスを踏むようにしましょう。これが産廃リスクを重要視している会社の姿勢を、社員に示す機会にもなります。

生物脱臭(ポーラスα)2段脱臭の効果

生物脱臭(ポーラスα)2段脱臭の効果

ポーラスαとは、㈱鳥取資源化研究所が製造するガラス発泡材です。多孔質の素材に生物が生息し、臭気を通気させることで脱臭します。ポーラスαは半永久的な素材で、水で湿らし続けることで脱臭能力が維持できるランニングコストが掛からない脱臭法です。

当社は排水処理工程から発生する臭気をこれで脱臭しています。生物脱臭なので、温度は30℃前後、臭気濃度もあまり高くない排気の処理に向いています硫化水素アンモニア等、比較的、脱臭し易い成分の処理に有効です。メチルメルカプタン等、脱臭処理し難い成分が含まれている場合は、2段脱臭が有効です。当社の導入事例を紹介します。

2段脱臭フロー

50m3タンクを2基設置(No.1脱臭槽、No.2脱臭槽)し、それぞれポーラスαを40m3ずつ充填します。タンク上部の隙間(10m3)は、シャワー散水スペースです。

臭気排気は、No.1脱臭槽の底側面から対角線上4か所から入れます。ポーラスαを通過した排気を、上から抜き、No.2脱臭槽の底側面に入れます。No.1脱臭槽と同様、対角線上4か所から入れると、均等にポーラスαを通過させることができます。処理後の排気は、No.2脱臭槽上部から大気放出します。

2段脱臭の効果

排水処理工程から発生する臭気は、硫化水素が主成分です。それにメチルメルカプタン、硫化メチルも若干、含まれます。硫化水素は比較的分解し易く、No.1脱臭槽でほとんど脱臭できます。メチルメルカプタンと硫化メチルはNo.1脱臭槽だけでは47~81%くらいしか脱臭できません。残りはNo.2脱臭槽で処理します。No.1とNo.2脱臭槽で全成分とも、ほぼ100%脱臭できます。

150m3/min通気した時の、脱臭データは以下のとおりです。

硫化水素 メチルメルカプタン 硫化メチル
No.1脱臭槽入口 2.5ppm 1.7ppm 0.8ppm
No.2脱臭槽入口 0.026ppm 0.32ppm 0.42ppm
No.2脱臭槽出口 0.0031ppm 0.0015ppm 0ppm
No.1脱臭槽 臭気カット率 99% 81% 47%
No.2脱臭槽 臭気カット率 88% 100% 100%
No.1+No.2 臭気カット率 100% 100% 100%

工場敷地境界の臭気・騒音連続モニタリングの重要性

工場敷地境界の臭気・騒音連続モニタリングの重要性

工場で最も多い住民クレームが臭気・騒音です。通りすがりの人は、一瞬、臭気や騒音を感じても、工場に電話を掛けてまで苦情を言う人は、ほとんどいません。しかし、住民は長時間、臭気や騒音を感じるので、苦情を申し立てます。要するに、早く異常に気付き、対処すれば住民苦情にはならないのです。それには連続測定機を使ったモニタリングが非常に有効です。事例を紹介します。

苦情発生事例

1.臭気苦情

A工場に隣接した書店があり、以前より、臭気に関する苦情を断続的に受けていた。臭気源は、構内に堆積している排水スラッジと排水処理設備の排水臭。
排水スラッジは堆積期間が1週間以上経つと腐敗臭が強くなるので、短期間で焼却処理するよう努めているが、焼却炉が定期修理等で停止すると堆積期間が長くなってしまう。結果、臭気苦情が発生する。
排水臭は、夏場に水温が高くなると揮発量が増え、風下に臭いが漂う。対策として昨年まで夏場のみ硫化水素抑制剤を投入していたが、薬品メーカーから値上げ要請があり、本年は添加を止めた。結果、臭気揮発量が増え、苦情が発生した。

2.騒音苦情

近隣住民から、夜中に10分程度、工場から大きな蒸気吹き出し音がしていたとの情報提供があった。B工場には敷地境界に連続騒音計を設置しており、トレンドを確認したところ、2時間毎に上昇があった。ボイラーの操業と突き合せると、灰除去装置の作動タイミングと一致した。設備不良で作動時に蒸気がリークしていることが分かった。

連続モニタリングの有効性

B工場は「騒音」を敷地境界で連続モニタリングしていました住民から情報があってから記録を調べ、灰除去装置の異常が分かりました。情報提供の前に社内で気づき、対処しておれば、なお良かったのですが、連続測定の記録があったから短時間で原因を特定できました。今後の課題は、早く気づくための仕組みを構築することです。
騒音管理値を決め、超えるとアラーム発報するような仕組みが有効です。ただ、敷地境界のような基本的に静かな場所で管理値を設定すると、セミの鳴き声や、雨の音等、外乱でアラーム発報してしまうケースが多発します。ボイラーの機側に騒音計を設置し管理することで、外乱の影響を排除する工夫が必要になります。

A工場は「臭気」を敷地境界で連続モニタリングしていませんでしたこれを実施しておれば、堆積期間が長くなりスラッジ臭が強くなってきた時、また夏場に排水臭が強くなってきた時に、住民から苦情を受ける前に気づけたのではないでしょうか。スラッジに消臭剤を散布したり、排水への硫化水素抑制剤を添加する等の動きがとれたと思います。
工場巡回時に臭いに気づいていた従業員もいたと思いますが、よっぽどの臭いでない限り放置します。測定機にアラームを設定しておけば、それをきっかけに、行動しなければならないという心理が働きます。言わば、測定機に住民の代わりをしてもらうイメージです。操業変動や季節要因で臭気発生源の状況が変わる工場は、連続モニタリングの仕組みの導入は必須です。

連続モニタリング装置導入の注意点

連続測定機の導入に当たり、注意しなければならないのは、それを使って苦情をゼロにしたい!という強い思いを持った人がいないと、何の役にも立たないことです。測定値の分析、測定機のメンテナンス、校正等、維持管理には費用と労力が掛かります。ほったらかしにすると、測定値に信頼性がなくなり、アラームが発報されても誰も気にしなくなります。連続測定機導入にも、かなりの費用が掛かるので、決して無駄にしないようにしましょう。権力者の鶴の一声で導入したら必ず失敗します。導入は、強い思いを持った従業員が声を上げてくるまで忍耐強く待ちましょう。権力者は声が上がってくるような雰囲気作りに注力しましょう。

台風が敷地境界臭気に与える影響

台風が敷地境界臭気に与える影響

当社では工場周辺の定点10箇所で月1回、悪臭4成分(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル)をガスクロで測定しています。内、2箇所は重点モニタリングポイントとして週1回、測定しています。 8月、9月の測定において、他の月より高めに出る日が多くありました。今年は8月頃から毎週のように台風が発生しており、測定値が高めに出た日は、雨天ではないものの必ず台風が近くを通過していました。 これまで、あまり気にしていませんでしたが、敷地境界の臭気は、かなり台風の影響を受けているようです。

臭気測定日の気圧配置

8月(8/3、8/14、8/21)と9月(9/8)の臭気測定日の気圧配置は、下図のとおりでした。何れの日も、日本列島の近くに台風があります、この内、敷地境界の複数個所で臭気協定値超過が発生したのは、8/14、8/21、9/8でした。この日は、何れも台風が日本列島の南側に位置していました。

台風(低気圧)の上昇気流は、周辺に下降します。この下降気流が発生している時は、工場で大気放出している臭気排気が上方に拡散する力が弱まり、地表で臭気が検出されやすくなります。

台風の影響を考慮した臭気対策法

大気拡散させている臭気は、敷地境界で悪臭防止法の基準濃度以下であればよいです。臭気発生源から敷地境界までの距離が遠ければ、その間に希釈されるため、発生源の臭気濃度は高くてもよいことになります。

まず、発生源毎の臭気濃度を測定しましょう。悪臭4物質の悪臭防止法 基準濃度は、硫化水素0.02ppm、メチルメルカプタン0.002ppm、硫化メチル0.01ppm、二硫化メチル0.009ppmです。メチルメルカプタンの基準濃度が最も低いので、発生源濃度も低くしなければなりません。敷地境界から200mほど離れた場所で、高さ20mから放出した臭気は、おおよそ1,000倍希釈で敷地境界に到達します。よって、発生源のメチルメルカプタン濃度は2ppm以下にする必要があります。

発生源濃度を下げる方法は、イニシャルコスト、ランニングコストを考慮の上、最適な方法を選択しましょう。自社にボイラーがあれば、燃焼エアに混ぜて焼却分解するのが最も安価です。薬品を使った脱臭スクラバー方式は、ランニングコストがかなり掛かりますが、他に方策がない場合は、法令順守の観点から対応せざるを得ないでしょう。コスト重視で運営していると企業イメージが低下し、結果的に商品が売れなくなり存続の危機に陥ります。